公益財団法人 日本腎臓財団
(旧腎研究会)設立趣意書

公益財団法人 日本腎臓財団は下記の設立趣旨のもと、
昭和47年9月1日に設立されました。

腎不全患者は人口1億人に対し、毎年1万人の割合で発生します。そのうち大多数は慢性腎不全といわれ、いままでは適切な治療法がなく、尿毒症を起こし、死への転帰をとる病気としておそれられてきたものであります。

この機能を失った腎臓にかわって、透析というテクニックを用い、血液中の老廃代謝物質を除去する方法、いわゆる人工腎臓が開発されました。これによって、患者は死の危機を逃れることができるばかりでなく、ほとんどの患者は社会復帰さえできるようになりました。

我国には、人工腎臓を必要とする患者数は現在1万人余り(注:昭和47年当時)で、51年には2万5千人を越えるといわれています。(注:347,474名 令和4年末現在)これに対し、人工腎臓は約1,300台余りしかなく、その恩恵に浴する患者は千数百人にすぎません。

関係当局はこれに対処する諸施策を講じていますが、設備、治療費などが高価なこと、専門医・看護婦・臨床検査技師の不足、社会の協力体制の低調などの理由によって、対策は著しく遅れています。しかし最近になって、人工腎臓の研究に対する国の補助、腎不全対策検討会の設置、透析装置の国産化、治療に対する健康保険の適用など腎不全をとりまく環境は著しく好転しました。しかし、人工腎臓による治療は一般の病気の場合と異なり、患者にとっては終生の闘病であります。医師は医療人であると同時に、患者が生きるための指導者であり、ケースワーカーでもなければなりません。また、血液透析センターは単なる病院ではなく、家庭の延長であり、社会の一部、リハビリテーションのための道場ともいえましょう。

このような特質をもった機関を開発、整備していくことは一般の民間機関や医療機関の独力では到底不可能であります。公益的な立場で広く世論に訴え、国と自治体の指導、援助のもと、各界の協力を仰いではじめてその目的を達成するものと信じます。われわれはこのような実情に鑑み、当法人を設立し、目的を達成するために次の事業を行おうとするものであります。

  • 人工腎臓に関する研究、調査活動に対する援助
  • 腎移植のシステム化に関する研究、調査活動に対する援助
  • 腎研究に関する注目すべき業績に対する褒賞
  • 腎に関する臨床検査技師の養成の援助
  • 腎患者の社会復帰施策に対する援助
  • 全国ネットワークをもつ腎センターの設立に関する研究、調査活動に対する援助
  • 腎に関する海外諸団体との連絡および情報の収集
  • その他前条の目的を達成するために必要な事業

なにとぞ設立趣旨にご協賛くださるようお願い申し上げるとともに関係当局のご理解とご指導をお願いする次第であります。

以上

設立発起人

原 安三郎 日本化薬株式会社 取締役社長
長谷川 周重 住友化学工業株式会社 取締役社長
井深  大 ソニー株式会社 取締役会長
今里 廣記 日本精工株式会社 取締役社長
木川田 一隆 東京電力株式会社 取締役会長
河野 文彦 三菱重工業株式会社 取締役会長
松尾 正雄 前厚生省医務局長
大島 研三 日本大学教授
佐多 保之 株式会社 東機貿 取締役社長
佐藤 喜一郎 株式会社 三井銀行 取締役相談役
瀬川 美能留 野村證券株式会社 取締役会長
田川 誠一 衆議院議員
田代 茂樹 東レ株式会社 取締役名誉会長
植村 甲午郎 社団法人 経済団体連合会 会長
宇佐美 洵 宇佐美事務所 所長
安居 喜造
(設立代表者)
東レ株式会社 取締役会長

(昭和47年9月1日、敬称略・順不同)